自分が妊婦であるとわかった瞬間に、やたらめったら寝始めた相方さんである。

胎児に名前を付けて話しかけてやると胎教に良いらしいという噂を聞きつけ、早速、胎児用に名前を付けてやることにする。

男か女かわからないので、どちらでもいける名前で考えるわけなのだが、そうするとどうしてもペットみたいなのになってしまうので困りつつ、結局「モテモテな子になりますように」という願いを込めて「モテモテ」という名前にしてみた。でも呼びにくいので、もっぱら「モテ子」だの「モテきち」だの「モテすけ」だの、挙げ句の果てには「モテ嫁」だの「モテ爺」だのという、もはや男とか女とかいう次元ではない名前で呼び始めている私たちである。もちろん、実際に生まれてきたら正式にきちんとした名前を付けてあげるわけなのだが、何となく名前を付けた後も当分の間は「モテ子」だの「モテすけ」だのと呼んでいるような気がして、想像すると結構笑える。

病院に行ってみたら、医者に「おめでとうございます」と言われたそうだ。医者の方が相方さんよりも嬉しそうにしていたらしい。別に、あんたのコドモではないぞ、と思う。

どうにもこうにも疲れやすいのだそうだ。というか、すぐ寝る。休日など、驚くほどに昼寝をしておいて、そのくせ昼寝したから夜寝られないかと思えば全くそんなこともなく、夜は夜で、布団に入るや否やすやすやと寝息を立てる相方さんなのだった。びっくりするくらい寝ている。テレビを見て笑っていたかと思えば、次の瞬間には寝ていたりもするので、心臓に悪い。

ご飯も色々気になるらしく、「お寿司か、またはカレーが食べたい」などと言い出すのだったが、普通、人は、お寿司が食べたい時にカレーが出てきたら相当へこむと思う。

隣で見ていて、うすうす「これはきっと妊婦だ」と思う。うすうすというか、絶対妊婦だろうと思っている。これで妊婦じゃないほうがびっくりするし、「風邪ですね」とか言われても、「お寿司かカレーが食べたくなる風邪って何ですか？」という話である。